ECサイトを運営していくにはどうすればいいのか? 自社のサイトを成功に導くにはどんな手を打てば良いのか? より魅力的なショップにするには、どういう点に気をつければいいのか? ECサイト運営者の皆さんが抱える疑問を解決するお手伝いをするのがこの記事です。合い言葉は「本は素敵な先生」です。
この記事でわかること
1.「なぜ通販でかうのですか?」を選んだ理由
2.著者の斉藤駿サンって、どんな人?
3.「なぜ通販でかうのですか?」から学ぶECサイト運営のコツ
その1:「Don't Be Evil」に通じる、ECサイト運営の基本
その2:オリジナル商品を作ることは、そんなに難しいことじゃない
その3:ペルソナや、カスタマージャーニーマップを考えることって、実は簡単
その4:広告の力だけで需要は作れないことに要注意
その5:レビューは”ただあればいい”というものではないことに注意
4.おわりに
1.「なぜ通販でかうのですか?」を選んだ理由
『通販生活』でおなじみのカタログハウス創業者である斉藤駿サンの本。初版発行は2004年。カタログ通販の秘訣について綴られている本ですが、ECサイトを運営する際のバイブルとしても、読むことができる本なのです。ECにしろ、カタログ通販にしろ、TV通販にしろ「実物を手に取って確認することができない状況で商品を販売する」という点は同じなのです。これはメタバースの世界になったって、どれだけVRが発達したって変わらない真理です。では、そのような状況でどうすべきか? どこから手をつけるべきなのか? を教えてくれるのが本書なのです。
2.著者の斉藤駿サンってて、どんな人?
(参考:8時だよ!通販生活)
斉藤駿サンは、カタログ雑誌『通販生活』の創刊編集長であり、発行元である株式会社カタログハウスの創業者です。40代以上の方であれば、「きんさんぎんさん」をイメージキャラクターに使ったCMを覚えている人も多いでしょう。カタログハウスの前身となる株式会社日本ヘルスメーカーの設立は1976年となりますが、斉藤駿サンはそれ以前より幼児向けの通信教育を行う企業を経営していたのでした。
その中で培ったのが通信販売のテクニック。曰く「時代の欲望を通信販売という広告にしたからだ」と。広告を駆使し、数多くの購入者を獲得していったのでした。このテクニックを様々な商品に応用し、そして様々な独自商品を開発し、『通販生活』を産み、育てたのでした。ちなみに、新聞の記事広告を発明したのも斉藤駿サンですよ。
「え!そんなに独自商品を開発できないよ」と、思う方も多いでしょう。でも、安心してください。斉藤サンは『なぜ通販でかうのですか?』で、独自商品を開発する方法も教えてくれますから。
では、本書の中に進んでいきましょう。
3.「なぜ通販でかうのですか?」から学ぶECサイト運営のコツ
その1:「Don't Be Evil」に通じる、ECサイト運営の基本
「Don't Be Evil」といえば、Googleの行動規範の一部です(いまはDo the right thing.に変わっているそうです。)(参考:GIZMODO)
この「Don't Be Evil」と似たようなフレーズが、本書の冒頭に出てきます。
通信販売とは、商品の現物を見せない、触らせないで売るビジネスだ。商品をコトバと写真に置き換えて売るわけだから、その気になれば、粗悪品を一流品のように語ったり見せたりもできる。
通信販売も、ECも「商品の現物を見せない・触らせないで売るビジネス」であることに変わりありません。商品写真と説明文だけで販売するわけですから、悪さをしようと思えば、いくらでもできてしまうのです。実際、一見信頼できそうな海外サイトから格安の商品を買って「だまされた!」となった人が、あなたの近くにもいたりしませんか?
「そんな、お客様をだますようなことはしないよ!正直にビジネスをするよ!」このフレーズを読んだあなたは、そう思ったことでしょう。その気持ちを忘れずに、ECサイト運営を行ってくださいね。
その2:オリジナル商品を作ることは、そんなに難しいことじゃない
斉藤サンは『なぜ通販でかうのですか?』で、通販で売れる商品をこのように言い切っています。
カタログ通販で売れるのは、街のお店では入手しにくい商品なのだった。消費者は、「街のお店でも簡単に入手できる商品」はわざわざカタログ販売では買わないのだった。
このフレーズを読んだあなたは「そんな都合良くオリジナル商品を扱うことなんてできないよ!」思ったことでしょう。でも、安心してくださいね。街のお店で販売されているのと同じ商品であっても、価格が1円でも違えば、アフターサービスや、保証内容が異なれば、それは「街のお店では入手しにくい商品」となるとのことです。
そうでなければ、消費者は、わざわざ、送料を負担したり、配送時間を負担したりして、商品を買うことはないのです。近所のコンビニで買い物を済ませてしまうのです。
なお、この「街のお店では入手しにくい商品」は価格設定や、ブランド価値だけから作られるものではありません。地域性(燕三条の包丁など)や、物語性(うどん好きのサラリーマンであった主人が〜)によっても、作り上げることが可能となります。このようなことを踏まえると、コロナ禍によって日本中で誕生した小さなお店(企業)のECショップというのは「街のお店では入手しにくい商品」がラインナップされた世界だといえるのかもしれません。
その3:ペルソナや、カスタマージャーニーマップを考えることって、実は簡単
マーケティングの基本は、ペルソナを設定し、そのペルソナのカスタマージャーニーマップを作成することです。
ペルソナとは、そのサービスや商品を使う典型的なユーザー像をまとめたもの。カスタマージャーニーマップとは、ペルソナが商品やサービスの購入するまでのプロセスや行動パターンを、思考や感情も踏まえて整理したものです。このペルソナとカスタマージャーニーマップを利用すれば、顧客体験を向上でき、商品やサービスのアプローチを最適化できるということで、EC担当者の間で注目が集まっているマーケティングのフレームワークです。
しかし、ペルソナやカスタマージャーニーの作成はめんどくさいものです。Shopifyの担当になって「ペルソナとカスタマージャーニーマップを作りなさい」と言われ「げ!」となっている方もいることでしょう。でも、安心してください。大丈夫です。『なぜ通販でかうのですか?』の中にある次のフレーズを読み上げてください。
使用価値を自分の頭で考えてごらん
買う人のイメージをきみの好きなように固めて売ってごらん
あなたがサイトで売ろうとしている商品のセールスポイントってどこでしょうか? そのセールスポイントは、どんなときに輝きますか? その商品を手にすることによって、ユーザーはどんな課題を解決することができますか? わざわざ難しく考える必要はないのです。だって、通信販売はペルソナや、カスタマージャーニーマップって概念がなかった昔からあったのですから。
その4:広告の力だけで需要は作れないことに要注意
デジタルマーケティング関連の書籍には「態度変容」や「需要喚起」というコトバがたくさん出てきます。この件に関して、斉藤サンは本書の中で次のように述べています。
ときどき、「需要をつくる広告づくり」なんておそろしいことを広言する人が現れるが、広告の力だけではとても需要はつくれない。消費者はそれほど単純ではないよ。需要は広告の力だけではなくて、消費者一人一人の環境や気質、主義や経験、時代の気分や変化などによってつくられていくものだ。広告の力を買いかぶってはいけない。広告にはせいぜい、消費者の内部に潜在している需要を顕在化する力しかないのだから。ま、それだけでも大変な力だと思うけれど。
私たちは広告を出稿すれば「消費者の気持ちを変えることができる」とか、「ユーザーのほしい気持ちを生み出すことができる」と思いがちですが、そんなことはないのです。広告だけにそこまでの力はないのです。広告ができることといえば、ユーザーの心の中に隠れている潜在的な思いを可視化する手伝いくらいです。そして、広告は、”課題を解決するための手段を知れば買ってくれる層(絶対需要層)”に向けて行うのではなく、そもそも課題があると認識しきっていない層(相対需要層)”に向けて行うものである、と斉藤サンは教えてくれます。
その5:レビューは”ただあればいい”というものではないことに注意
消費者が商品の購入を決意するときに重要な要素となるのは使用価値だといいます。「本当に使って良いものなのか?」ということを知るために、多くのユーザは購入前にレビューを参考にします。「じゃあ、うちも商品レビューを載せよう」という話になるのですが、ちょっとストップです。商品の使われた背景がわからなければ、そのレビューはユーザーの心に響きません。逆に「レビューではこう書いてあったのに!」というクレームの元になることがあるので、要注意なのです。このようなレビュー(商品コメント)のキモを斉藤サンは次のようにまとめています。
理論(売り手の説明)は未知であり、経験は既知だからだ。理論の不安より、経験の安心。
人は経験を媒介して理論を信用する。
どのような背景で、その商品が使われたのか?使用したユーザーサンはどういう人なのか?その背景もわかるようにして、商品レビューを掲載するようにしましょう。
4.おわりに
日本に記事広告という概念を広め、カタログ雑誌『通販生活』を生み出した斉藤駿サン。その斉藤サンが書いた『なぜ通販でかうのですか?』は、カタログや、新聞を中心とした通信販売にまつわることばかりです。しかし、「実物を手に取って確認することができない状況で商品を販売する」のは、カタログ通販も、Shopifyの運営も同じです。どうやってサイトを運営すれば良いのか?そのヒントはこの本の中にあります。
本記事でご紹介した本や記事の情報は記事公開時の情報となっております。
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